ターンテーブルという存在は、まさにパラドックスそのものだ。ターンテーブルを操るミュージシャンは、有限なレコード音源を使って、無限の変化を作ろうとする。それは困難が約束されたハードな航海だ。
デトロイトの若者が、誰も欲しがらない古臭いリズムマシンで、全く新しい未来の音楽を作り出した。そうやってエレクトロサウンドははじまった。
リッキーラッカー待望の3枚目のアルバム「銀河」は、誰も予想しなかった異質な要素(エレクトロサウンド!)を全面的に取込みなら、彼の音楽のパレットを完全に書き換える1枚となった。
Roland社の伝説的リズムマシン、TR-808のディープなキック、輝かしいTR-909のシャッフルとハンドクラップ、ゴージャスなネオンシンセのウェーブは、レーザーみたいな眩しさで、忘れさられた未来をキラキラと照らしだす。
このアルバムが見せてくれるのは、テロや地球温暖化や洪水が待ち受けている未来ではなく、僕らが待ち焦がれ続けていたガンダムや空飛ぶ乗り物が飛び交う夢見ごこちな未来だ。つい何度も見てしまう古いSF映画のように、心地いいシーンの数々。劣化したビデオテープで見る宇宙バトルは、僕らの体と記憶に染み渡る。
「銀河」は、まさに銀河のように、僕たちの様々な聞き方を飲み込む。聴くたびに人間的な温かみを増してくる機械音たち。まるで、生命があるかのように。
リッキーラッカーは、片足を過去に、もう片方を未来に突っ込んで、あらゆるジャンルの壁を笑い飛ばしながら大またで闊歩する。常に新しい音楽を切り開きながら。